行動観察調査の実施方法とは?企業による実施例も紹介します!

  • 行動観察調査

公開:2022/09/28

更新:2023/05/25

行動観察調査は、大手企業でも導入が盛んになっている手法です。

効果のある調査を実施するには、ポイントを押さえて検討しなければなりません。

本記事では、行動観察調査の実施方法から企業による事例まで紹介します。

行動観察調査とは?

対象者の自宅に訪問し、行動観察を含めて話を聞いたり、同じ環境に一定期間身を置いたりして行う調査手法です。

ほかにも、街に出かけて道ゆく人の行動観察をするものも範囲とされ、その定義は幅広くなっています。

現在は市場が成熟し、欲しいものがない時代といわれています。

各企業ともがプロモーションで違いを出すも、限界を感じていることがほとんどです。

そこで、顧客へのインタビュー調査を通じてマーケティングを展開するようになりました。

しかし、結果から期待できるほどの成果を得られなくなってきたため、現在は行動観察調査が特に注目されています。

行動観察調査の実施方法は4ステップ

行動観察調査の実施方法は、以下の4ステップで行います。

  1. 具体的な調査概要を設定する
  2. 調査の対象者を選定する
  3. 調査を実施する
  4. 調査結果を分析する

事前準備から分析まで、ポイントを押さえて実施しなければ思うような効果は得られません。

それぞれのステップに分けて詳しく解説しますので、見ていきましょう。

ステップ1.具体的な調査概要を設定する

調査を実施する前に具体的な調査概要を設定しましょう。

設定すべき項目は以下のとおりです。

  • 調査期間
  • 調査人数
  • 目的
  • 利用機材
  • 場所
  • 仮説

特に、仮説の設定は慎重に行いましょう。既存顧客などのデータを基に対象者が抱えているニーズを設定します。

仮説が適切に設定されていなければ、具体的な改善箇所を検討できなくなる恐れがあるため、注意しましょう。

ステップ2.調査の対象者を選定する

行動観察調査においては、2種類のユーザーを対象者とする場合が多くなります。

  • ヘビーユーザー:商品・サービスの利用頻度が高いファン層
  • アンチユーザー:商品・サービスに否定的な考えを持つ層

これらのユーザーを総称して「エクストリームユーザー」と呼びます。

エクストリームユーザーは一般的な消費者よりもこだわりが強い傾向にあり、両方の視点から対象者を観察することでサービスの改善に繋がります。

ステップ3.調査を実施する

行動観察調査では、自宅などの対象者が普段暮らしている場所で実施します。

また、自宅以外にも外出先に同行して行動観察をするケースも考えられるでしょう。

あわせてインタビューを行い、実際の声にも耳を傾けます。

適切な調査結果を得られるように時間の確保を、多角的に検証を進めるために複数人での調査をするとよいでしょう。

ステップ4.調査結果を分析する

調査結果を分析し、サービスの改善や新商品の開発に繋げます。

調査結果から得られた行動傾向や個人ごとの違いをデータ化し、記録に残しておきましょう。

データを基に、対象者のニーズを深掘りして整理します。

行動観察調査にて読みとった傾向から、改善施策の検討へ発展させていきましょう。

企業による行動観察調査の実施例

行動観察調査を実施した企業の例を2つ紹介します。

  • 花王株式会社
  • 株式会社良品計画(無印良品)

いずれも、肌に触れるものや食料品などの製品を販売している企業です。

行動観察調査を、消費者のニーズに応えた製品開発へうまく活かしています。

それぞれの事例を紹介しますので、見ていきましょう。

例1.花王株式会社

花王は、洗剤やボディケア用品を取り扱う企業です。

ユーザーの関心が高いエイジングやアンチエイジングについて、ユーザーの意識や行動理由を明らかにするために、行動観察調査を実施しました。

栄養士や医師などで観察チームを組み、生活環境や感じている悩み、年齢が異なる5名を対象としています。

実際の調査では、自宅以外にも社員食堂での行動観察も取り入れられました。

その結果「エイジングに対する意識はアイデンティティの変化に関連している」と結論付け、一般の消費者にも当てはまることが確認されています。

例2.株式会社良品計画(無印良品)

無印良品計画は、生活用品から食品まで幅広く扱う企業です。

商品開発を行う際、一般家庭を訪問して行動観察調査を実施しています。

特徴は、事前に家を片づけないように依頼することです。

対象者にはできる限り普段どおりの生活をするように協力を求め、部署を超えたメンバーで構成されたグループで調査を実施します。

「A=B」のような単純な結論を「解答」とせず、周辺に見えなくなっている理由やヒントを、観察によって明らかにすることが調査テーマです。

調査結果を活かして、消費者の顕在化していないニーズに合った商品開発へ繋げています。

まとめ

行動観察調査を成功させるためのステップと、企業による実施事例を解説しました。

行動観察調査は、対象者の声だけでなく、普段の生活の様子や感じていることも明確にできます。

適切に実施すれば、消費者がまだ明確にしていないニーズを先取りすることにも繋がるでしょう。

行動観察調査を実施する際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

最後に、冷蔵庫内の食品管理から調理までの行動観察調査を行った動画をご紹介します。

無料で閲覧出来るので実際の行動観察調査に興味のある方は是非ご覧ください。

⇒ 調理実態に関するエスノグラフィ(行動観察)調査

最後までお読み頂きありがとうございました。

執筆者

光田直史

高校卒業後、地元の運送業界や不動産業界に従事し、以後8年をIT企業の製造部門で勤務。事業部長と内部監査室長も兼任した。
その経験を活かし、2020年よりライターとして活動開始。
ビジネス、金融、IT、マーケティング、不動産、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。

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