採用CX(candidate experience)とは、人材採用における「候補者体験(キャンディデート・エクスペリエンス)」のことで、一般的にCX(customer experience)で表される「消費者体験(カスタマー・エクスペリエンス)」に準じた概念です。
どちらも現代人の価値観に基づいた考え方であり、全体を一貫性のある体験ととらえる点が共通しています。
採用CXも採用の全プロセスを体験に見立てて、求職者に強くアピールする手法です。
今後はさらに広がりを見せると予想される採用CXについて、この記事では注目される背景や導入するメリット、さらに運用方法まで段階的に解説します。
この記事の内容
採用CXの考え方
現在は商品やサービスの質、価格、特典などに加えて、どうすれば消費者に快適な体験をしてもらえるかが、CX(消費者体験)として重視されています。
この考えが人材採用にも導入され、採用CX(候補者体験)として広がりつつあります。
キャンディデートとは選挙の候補者を表しますが、採用CXの場合は求職者のことです。
採用CXとは求職者を候補者と位置づけ、候補者の就職活動から応募・選考・内定・入社に至るすべてのステップで、他社ではできない体験を提供するという取り組みです。
なぜ採用CXが必要なのか?
近年採用CXが注目されるようになったのは、働き手と求職者の意識変化が最も大きいと考えられます。
さらにその背景にあるものは、社会全体における働き方の変化でしょう。
まず人材不足が慢性化している中で、転職が一般的になるなどして労働力の流動性が高まりました。
社員が1つの会社に定着することは常識ではなくなり、社員は自分の価値観で働く先を選べるようになりました。
結果的に企業が求人情報を出し、それを見て応募した求職者を企業が選ぶ時代ではなくなったのです。
今では企業側がさまざまな手段で、可能な限り自社の魅力を配信し、人材確保を成功させようとしています。
それでも人材確保が困難になったため、今度は商品やサービスをPRする手法を採用の分野にとり入れました。
それがCXをベースにした、採用CXの始まりといえるでしょう。
採用CXを導入するメリット
実際に採用CXを導入した場合としない場合とでは、どのような違いが生じるのでしょうか。
ここでは導入した場合に考えられる、3つの大きなメリットを紹介します。
人材採用の成功率が高まる
採用CXで上質の体験ができれば、候補者がプロセスの途中で離脱するケースを減らすことができます。
これは採用CXの最大の目標でもあります。
ステップごとに候補者は新しい体験ができるため、入社というゴールに到達しようという意識が高まるのです。
採用のマッチング精度が向上する
採用CXの一連のプロセスは、既存の採用方法と比べて期間が長くなります。
その間に企業と候補者は多くのやりとりを経験し、お互いのことを深く知ることができるでしょう。
そのため内定辞退や採用後のミスマッチなどが減少し、定着率の向上にもつながります。
企業イメージのアップにつながる
採用CXではさまざまな方法で情報を発信するため、企業のイメージアップという副産物も期待できます。
商品やサービスの売上向上に寄与する可能性もあります。
ブランディング戦略としても積極的に活用するべきでしょう。
採用CXの導入・運用方法
目的が人材確保であるため、採用CXには計画性と戦略がなければなりません。
基本部分はほかの採用方法と共通ですが、採用CXでは以下の手順に従った体験をもとに候補者を誘導します。
①求人段階での体験
多様な流入ルートを設けて、まずは自社の認知度を高めます。
候補者には各種メディアを通じて、働く場としての良いイメージを送り続けます。
できるだけ幅広い層に情報を発信することが重要です。
②応募段階での体験
求人に応募してきた候補者に対しては、すぐにアプローチする必要があります。
インターネットでのやりとり以外にも、イベントに招待したりカジュアル面談の場を設けたりして、ポジティブな体験を提供します。
③選考段階での体験
主に面接時の対応ですが、面接担当者が適切な応対をすることはもちろん、候補者に社内の良い雰囲気を伝える工夫が必要です。
社内全体で、候補者を大切にする姿勢が重要なのです。
④内定~入社段階での体験
選考は可能な限りスピーディーに行い、採用が決定したらすぐに内定を知らせます。
そこからは、できるだけコミュニケーションを欠かさないようにします。
内定者研修、職場見学、懇親会などのイベントを設定して、内定者に安心感と親近感を抱いてもらいましょう。
こうした各段階をスムーズに進めるためには、綿密な採用計画と具体的なプロセスの構築が必要です。
テーマは「体験」になるので、候補者にどのような体験をしてもらうか、社内全員の協力で人材採用戦略を進めなければなりません。
候補者にアプローチする場合、オウンドメディア、採用サイト、SNSなど複数のチャネルで情報発信することも重要です。
最近ではインターンシップ制度を充実させる企業も増えています。
まとめ
求職者は就職先を決める段階で、いわば採用の体験ツアーに参加するといっても良いでしょう。
このツアーを通して良い体験ができれば、採用CXは成功に近づくことになります。
一般的なツアーが細かい部分まで計画してあるように、採用CXでも計画と実施プロセスの構築作業が欠かせません。
その内容が採用の成否を握るからです。
もしも社内にノウハウが不足していて、採用CXの構築に不安を感じるようなら、外部の専門家にサポートを依頼することも1つの選択肢として検討してみましょう。
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