近年、広告運用をインハウス化(自社運用)する企業が増えています。コスト削減やノウハウの蓄積、スピーディーな運用が可能になる一方で、「思うような成果が出ない」「体制が整えられない」といった課題に直面する企業も少なくありません。
そこでこの記事では、インハウス化を進める際の課題や成功のポイント、さらに代理店の効果的な活用法について解説します。
この記事の内容
インハウス化する際の課題と失敗しやすいポイント
広告運用のインハウス化には多くのメリットがある一方で、いくつかの課題も伴います。特に、経験の浅い企業が直面しやすいのは「リソース不足」「運用体制が整っていない」「知見・経験不足」「データ活用の難しさ」といった問題です。
運用担当者が広告運用だけでなく他の業務と兼任している場合、十分な時間を確保できず、分析や改善が後回しになってしまうケースがあります。特に、広告運用はデータ分析やクリエイティブの検証・改善を繰り返すことが求められるため、片手間で対応すると効果が出にくくなります。そのため、専任の担当者を確保するか、運用をスムーズに進められる環境を整えることが重要です。1人の担当者に依存している場合は、担当者の異動や退職時に大きな問題となることも考えられます。
さらに、広告運用には媒体ごとの知識やターゲティングのスキルが求められます。代理店に運用を任せていた企業がいきなりインハウス運用を始めても、適切な施策が打てず、成果が低迷するケースは珍しくありません。
また、広告の分析や改善には、アクセス解析やKPIの設定が欠かせません。社内にデータを読み解くスキルを持つ人材がいないと、運用のPDCAが回らず効果を最大化できないこともあります。
インハウス化を成功させるポイント
インハウス化を成功させるには、以下のようなポイントを押さえておくと、スムーズに進めることができます。
適切な人材を確保し、社内で育成する
広告運用には多様なスキルが必要なため、社内に経験者がいない場合は、研修や外部講座を活用して担当者を育成することが重要です。広告媒体の公式ウェビナーなども実施されているため、実際に広告を運用しながら学ぶといった方法でスキルアップを図っていきましょう。
また、広告運用の経験があり、専門的なスキルを持つ人材の採用も視野に入れるとよいでしょう。
運用体制とフローを整える
インハウス化のメリットは、自社内で迅速にPDCAを回せることにあります。しかし、これには運用体制とフローを整えることが不可欠です。特に、1人の担当者だけに依存するのはリスクとなるため、チームとして取り組める体制を構築することが重要です。たとえば、運用のノウハウをドキュメント化し、定期的に情報共有を行うことで、属人化を防ぎながら安定した広告運用を実現できます。
また、広告運用には、戦略立案、配信設定、クリエイティブ作成、運用調整、効果測定、改善策の実施といった複数の工程が含まれます。社内での役割分担を明確にし、レポート作成や定期的なミーティングを取り入れることで、スムーズな運用が可能になります。
部分的に外部委託する
インハウス化を進める場合でも、すべての業務を社内で完結する必要はありません。広告の運用方針や日々の調整は社内で行いながら、クリエイティブの制作やデータ分析の高度な部分は外部に委託するという方法もあります。
特に、バナー広告や動画制作などのクリエイティブ領域は、専門とする会社に依頼することでクオリティを高めることが可能です。また、運用の方針に迷ったときには代理店などからコンサルティングを受けることで、施策の方向性を客観的に見直すこともできます。
インハウス化のために代理店を活用する方法
効率良くインハウス化を進めるには、代理店を活用する方法があります。具体的には、以下のようなポイントを部分的に依頼することで、より効果的な運用が可能になります。
最初は代理店に運用を任せる
インハウス化を目指す場合、いきなりすべての運用を自社で行うのはハードルが高く、効果的な広告運用ができないリスクがあります。そこで、最初の段階では代理店に運用を任せ、知見を得ながら徐々にインハウス化へシフトしていく方法が有効です。
たとえば、初めの半年間は代理店に運用を委託し、その間に社内で専任の担当者を採用・育成。その後、一定期間のサポートを受けながら、徐々に自社での運用に移行するという流れです。このアプローチでは、実践的なノウハウを得られるだけでなく、運用のリスクを最小限に抑えながらスムーズな移行が可能になります。
スポットでのコンサルティングを受ける
インハウス化した後も、代理店にスポットで相談できる環境があるとなお安心です。広告運用には明確な正解がないため、特に経験が浅い場合は判断に迷うことが多いでしょう。運用経験者でシミュレーションを作れる人ならある程度の目安は立てられますが、経験が少ないと「これで本当に成果が出るのか?」「この設定で合っているのか?」といった不安や疑問が出てくるものです。
そのため、「月に1回のアドバイザリー契約」のような形で運用の進捗をチェックしてもらうことで、コストを抑えつつ専門的なアドバイスを受けられます。実績のある代理店からアドバイスを受けられることで、安定した広告運用が可能になります。
クリエイティブ制作を外注する
バナーや動画広告の制作は、専門のスキルが必要となるため、社内で対応が難しい場合は代理店に外注するのも一つの手です。広告運用の戦略は社内で立案し、制作のみ外部に依頼することで、クオリティの高いクリエイティブを活用しつつ、運用のノウハウを社内に蓄積できます。
広告運用の研修を受ける
代理店が提供する研修サービスを活用するのも良い方法です。最新の広告運用トレンドや具体的な運用手法を学ぶことで、社内のスキルアップにつながります。
【事例紹介】代理店運用→インハウス化に成功した事例
最後に、代理店運用からインハウス化に成功した事例をご紹介します。
学習塾のポータルサイト
学習塾の比較・検索ができるポータルサイトを運営するクライアントでは、最初に弊社Heart Fullへご相談を頂いた時点で「最終的にはインハウス化したい」という希望がありました。しかし、運用経験がないため、まずはHeart Fullで運用を担当し、基盤を整えた上で最終的に社内担当者へ引き継ぐことをゴールとしました。
最初の半年間はHeart Fullが運用を担当。その間に専任の担当者を採用し、運用研修を実施するとともに、社内担当者が実際に運用しながらサポートを続けていきました。その結果、現在はインハウス化に成功し、基本的な運用は自社で行いながら、スポットで質問・相談を頂く形になっています。
このケースでは、インハウス化後の「実際に運用をしてみると、わからないことが出てくる」という課題が顕在化しました。特に、「この場合はどうしたらいいのか?」という細かな疑問は研修で学んだだけでは解決できないことが多く、経験が必要です。
そのため、完全なインハウス化を目指す場合でも、必要に応じて代理店に相談できる環境を整えておくことが重要だといえます。
まとめ
広告運用のインハウス化は、コスト削減やノウハウの蓄積といったメリットがある一方で、運用体制が整っていないと成果を出しにくいという課題もあります。最初から完全なインハウス化を目指すのではなく、自社の状況に応じて代理店を上手く活用しながら、段階的にスキルを高めていくことも有効です。社内に運用ノウハウを蓄積することで、より効果的な広告運用を実現しましょう。

リスティング広告【最適化】に必須のチェックリストを”無料”配布中!
リスティング広告を運用する上で必要なチェックリストをPDF形式で無料でダウンロードいただけます。
【広告代理店の運用者】が教えるリスティング広告の基礎を使ってあなたのビジネスの集客アップにご活用ください。