広告で成果を出すうえで、クリエイティブは切っても切り離せない重要な要素です。配信する媒体がどれだけ優れていても、ユーザーの目に留まり、行動を促すのは「クリエイティブの力」にかかっています。
本記事では、なぜ広告におけるクリエイティブが重要なのかを整理しつつ、実際の事例を紹介しながら、成果が出ないNGパターンや具体的な改善ステップを解説します。
なぜ広告で「クリエイティブ」が重要なのか?
広告においてクリエイティブは、ターゲットの目に留まり、アクションを促す最初の接点です。広告クリエイティブそのものがユーザーの注意を引き、関心を高める最大の武器となります。クリエイティブが重要である理由を、大きく2つ解説します。
成果に繋がるかどうかはクリエイティブで決まる
広告効果を最大化するには、いかにしてターゲットの心に刺さるクリエイティブを作れるかが鍵です。ニールセンの調査によると、「広告の成果のうち47%はクリエイティブによって決まる」との調査結果も出ています。

画像出典元:Nielsen Articles: When it comes to advertising effectiveness, what is key?
つまり、ターゲティングや予算調整と同等、もしくはそれ以上に、クリエイティブの質が成果に直結するということです。
インターネット上では情報が絶え間なく流れてきます。そんな中でスクロールの手を止めてもらい、広告をクリックしてもらうには、瞬時に「自分ごと」と感じさせるビジュアルとコピーが必要不可欠です。クリエイティブは単なるデザインではなく、成果を左右する戦略の一部なのです。
ターゲティング機能が変化する中での差別化要素となる
かつての広告運用では、Cookieを活用した3rd partyデータに基づく高精度なターゲティングが可能でした。しかし、近年ではプライバシー保護の流れが強まり、AppleのiOSアップデートやGoogleのCookie制限強化などにより、外部データによるターゲティングは年々難しくなっています。
このような状況下で、唯一コントロール可能であり、かつ広告成果に大きな影響を与えるのが「クリエイティブ」です。配信先のターゲティング精度だけに頼るのではなく、クリエイティブそのもので「誰の目に留まり、誰の心に響くか」を設計する必要があります。差別化を図るためにも、広告内容・表現方法における工夫がますます求められているのです。
成果が出ないクリエイティブのよくあるNGパターン
ここでは、広告で成果を出せない原因となりがちなクリエイティブの失敗例を紹介します。いずれも、少しの意識と改善で大きな違いを生み出せるため、注意しておきたいポイントです。
訴求軸が曖昧
多くのクリエイティブで見られる失敗が、「誰に・何を・どのように伝えるか」が曖昧なまま制作されているケースです。たとえば、ペルソナが明確になっておらず、潜在層・準顕在層・顕在層の区別がついていないと訴求がぼやけてしまい、多くの要素を詰め込み過ぎてターゲットに伝わりにくくなります。
たとえば、「転職エージェント」の広告を求職者に届ける場合を考えてみましょう。
▶訴求軸が曖昧なNGバナー例

- 未経験者・経験者の両方に訴求しており、ターゲットが絞り切れておらず、誰に刺さるのか曖昧
- 「クリエイター職」「事務・バックオフィス系の求人」とビジュアルや文言から想定される職種にズレがある
- 「デザイナー・プログラマーを志す方へ」の顕在層、「将来に対する漠然とした不安も解消」の潜在層の訴求が混在している
- テキストと女性の写真の温度感に差があり、マッチしていない
上記は多くの要素を詰め込み過ぎたNGバナー例です。何を訴求軸として伝えたいのかが曖昧なまま、クリエイティブに反映されています。
訴求軸をフェーズごとに整理すると、下記のような例が挙げられます。
フェーズ | 訴求例 | 訴求軸 | 目的 |
潜在層(まだ転職を考えていないが、漠然と今の仕事に不満がある層) | 「あなたは今の職場で本当に満足していますか?」 | 自己分析・現状の棚卸しを促す | 転職という選択肢に“気づいてもらう”。共感や気づきを与えるコンテンツにする |
準顕在層(なんとなく転職を考えているが、まだ情報収集中の層) | 「営業職から事務職へ。残業が減って年収はアップ!」 | 業種・職種別の課題に共感する/悩み別の情報提供 | 自身の状況に似た情報に敏感。事例や体験談で興味を引き、サービスへの関心につなげる |
顕在層(すでに転職活動を始めており、エージェントを比較検討している層) | 「非公開求人多数/履歴書添削・面接対策もサポート。まずは無料登録」 | サービスの強みや機能、登録メリット | 比較検討中のユーザーに対し、他サービスより魅力的であることを明示する |
このように、ターゲットの検討段階によって訴求内容を変えることで、無駄打ちを減らし、成果に直結するクリエイティブに改善することが可能です。
ユーザー視点が欠けている
広告クリエイティブは作り手目線ではなく、あくまで「ユーザー視点」で考える必要があります。社内で見慣れている言葉やビジュアルが、ユーザーにとっても分かりやすいとは限りません。
▶ユーザー視点が欠けているNGバナー例

- 「トランスダーム技術」「バイオメカニズム処方」と専門用語らしき文言が多く、化粧品になぜ必要かがわからない
- 「どう良くなるのか?」「誰に向いているのか?」が不明
- 「肌が潤う」などの使用後のイメージやベネフィットが分からない
上記のように、専門用語が多すぎると読み手が離れてしまいますし、ユーザーの悩みに寄り添ったコピーがなければ、自分ごと化してもらえません。
常に「この広告を見た人がどう感じるか?」という視点でユーザー理解を深め、ブラッシュアップする姿勢が重要です。
配信面への最適化ができていない
特にSNS広告では、広告がフィードや検索面、リール、Instagramであればストーリーズなど、さまざまな配信面に表示されます。画像サイズが最適化されていなかったり、文字が小さくて読みにくかったりすると、せっかくのクリエイティブも効果を発揮できません。
▶配信面への最適化ができていないNGバナー例

よくある失敗例としては、バナーの推奨比率を考慮せず、デザインが切れてしまう、フォントサイズが小さくテキストが読みづらい、などが挙げられます。
媒体ごとの仕様を理解し、それに合わせた最適なサイズと構成で制作することが、成果に繋げるうえで非常に重要です。
広告クリエイティブの改善事例
続いて、実際にMeta広告の改善事例を1つご紹介します。
ある美容クリニックの広告では「くま取り」施術を訴求したバナーで、初稿で作成した“女性写真+テキスト”の構成では反応が鈍かったものの、「目」に視線が集中するようにフォーカスしたデザインへ変更したところ、明確に効果が向上しました。
実際に、獲得率は7.6%から15.5%へと倍以上に改善。あわせて獲得単価も4,000円台から2,000円台へと大幅に低減するなど、クリエイティブの見直しによる成果が数字としても表れました。
また、「30%OFF」などの訴求ポイントを大きく目立たせることも、クリック率の改善に有効です。複数の訴求を盛り込みすぎて視認性が落ちるよりも、「ひと目で内容が伝わる」バナーの方が成果につながりやすい傾向にあります。
広告クリエイティブの改善ステップ
広告の成果を高めるには、やみくもにクリエイティブを変えるのではなく、目的やユーザー心理に基づいた設計が不可欠です。ここでは、成果につながるクリエイティブ改善のステップを3段階に分けて解説します。
①広告目的を再確認し明確にする
まずは広告やそのキャンペーンの目的を明確にしましょう。認知拡大が目的であれば、印象に残るビジュアルやブランド訴求が重要です。一方で獲得が目的であれば、訴求内容の分かりやすさや、すぐにアクションできる導線がポイントになります。
②訴求軸を整理する【検証フェーズ】
「誰に」「何を」届けるかを明確にしたうえで、ユーザーのインサイトに響くメッセージを選びましょう。たとえば、価格重視なのか、安心感を求めているのか、比較対象があるのかなどによって、適切な表現や訴求ポイントは異なります。
この段階では、「検証フェーズ」として、商材に対して多方面から複数の訴求軸を設定し、クリエイティブごとに分けて配信・分析するのがポイントです。
▶複数の訴求軸を設定した「転職エージェント」の求職者向けバナー例

クリック率やコンバージョン率などを見ながら、効果が出ているものやさらに改善できそうなものを今後の「拡大フェーズ」で注力する訴求軸として選定します。
③A/Bテストを繰り返し、クリエイティブを改善する【拡大フェーズ】
「拡大フェーズ」では、検証フェーズで効果が高かった訴求軸に基づき、キャッチコピーや配色、画像素材を調整しながらクリエイティブの精度を高めていきます。A/Bテストを行う際には、一度に複数の要素を変更すると効果の要因が特定できないため、1要素ずつに絞って検証しましょう。
▶「色」の要素を変更したA/Bテストのバナー例

また、ユーザー視点で見ると、類似した広告ばかりが配信されていると広告の摩耗スピードが早くなってしまいます。広告の摩耗を防ぐためにも、2つ以上の訴求軸を交互に検証するのが効果的です。
クリエイティブ制作を依頼する際に気を付けるポイント
バナーなどのクリエイティブ制作を依頼する際、依頼の仕方によって制作側の進行スピードや仕上がりの精度が大きく変わります。A/Bテストを繰り返すということは、その分クリエイティブの修正も繰り返されるので、修正に要する工数や負担はできるだけ減らしたいですよね。「どのように依頼したら分かりやすく伝わるのだろう」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで、実際にクリエイティブ制作担当をしている社内メンバーに、スムーズなやり取りを実現するポイントを現場視点で聞いてみたので、ぜひ運用担当者は参考にしてください。
参考バナーの提示
「こんなイメージで作ってほしい」という口頭の説明だけでは、意図が十分に伝わらないケースもあります。そのため、3〜4点ほど参考バナーを提示すると、制作側にイメージが正確に伝わりやすくなります。参考バナーは、色味、レイアウト、雰囲気などの共通点があるものを選ぶとより効果的です。
使用文言・構成の明示
バナーに入れたいキャッチコピーや訴求文言があれば、事前に具体的に記載しておくとスムーズです。たとえば「30%OFF」「無料カウンセリング実施中」などの訴求要素は、サイズ感や配置指定とともに伝えると、意図した仕上がりに近づきます。
素材指定はデザインとの相性を見て判断
「この写真を必ず使ってください」といった強い素材指定がある場合でも、デザイン全体との相性を見ながら判断することが重要です。イメージと合わない素材を無理に使うと、全体にちぐはぐな印象を与えてしまう可能性があります。制作側に柔軟な調整の余地を残しておくことで、完成度の高いデザインに仕上がります。
ガイドラインの共有
企業のブランディングに沿ったバナーにしたい場合は、カラーコードやトンマナなどをまとめた資料を共有しましょう。「このカラーは必ず使ってほしい」「この雰囲気は崩さないでほしい」といったポイントが明確であれば、ブランドイメージを損なわない高品質なデザインにつながります。
これらのポイントを意識することで、制作サイドとの認識のズレが減り、より戦略的かつ成果につながるクリエイティブが実現できます。
まとめ
広告運用は、クリエイティブ次第で成果が大きく変わります。ターゲティングや配信環境が変化する今こそ、ユーザー視点に立った訴求と設計が不可欠です。
本記事で紹介したNG例や改善ステップを参考に、クリエイティブの見直しや訴求軸の整理、A/Bテストを通じて継続的な改善を図っていきましょう。制作依頼時のポイントも押さえることで、より精度の高いクリエイティブ設計が可能になります。今後の施策にぜひ活かしてみてください。

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