企業SNSのサブアカウントは、公式アカウントでは発信しにくい「人柄」や「仕事の裏側」を届け、ユーザーとの接点を広げる手段です。公式SNSが告知中心になり反応が伸びにくいと感じていても、単にアカウントを増やせばよいわけではありません。公式との使い分けや成功事例、運用時の注意点を知ることで、自社に合った活用方法を判断しやすくなります。
企業SNSのサブアカウントとは
企業SNSのサブアカウントとは、公式アカウントとは別に、特定のターゲットやテーマ、目的を持たせて運用するアカウントです。SNS各社が共通して定める正式な機能名ではなく、企業のSNS運用を説明する際に使われる実務上の呼び方です。
公式アカウントでは、商品情報やキャンペーン、企業からの正式なお知らせなどを発信するケースが多くあります。サブアカウントでは、社員や現場、制作過程、専門知識など、よりテーマを絞った発信が可能です。
ただし、本記事でいう企業SNSのサブアカウントは、単に2つ目のアカウントを作ることではありません。公式とは異なる役割を持たせ、誰に何を届けるかを分けて運用することを指します。
サブアカウントが担う主な役割
サブアカウントは、公式では扱いにくいテーマを切り出す際に活用できます。例えば、社員への密着、商品開発の裏側、専門職による解説、特定の層に向けた企画などです。
公式アカウントが正確な情報提供や信頼性を担う一方、サブでは新しい接点や興味を生み出す役割を持たせる方法があります。
すべての企業がこの形に分ける必要はありません。ターゲットや発信目的が同じなら、公式アカウントに集約した方が運用しやすい場合もあります。複数の目的を一つのアカウントで扱うことに無理があるときに、サブアカウントを検討するのが現実的です。
サブアカウントがユーザーにポジティブに受け取られる理由
サブアカウントは、企業そのものよりも「人」「現場」「仕事」に焦点を当てやすい点が特徴です。商品情報だけでは伝わりにくい企業の一面を見せることで、ユーザーとの新しい接点をつくれる可能性があります。
企業ではなく「人」が見える
企業の公式発信では、どうしても商品やブランドが主役になりやすくなります。サブアカウントでは、メーカーであれば、商品企画に携わった社員やデザインを担当した社員、店舗ビジネスを展開している企業であれば実際の店舗スタッフなど、人を中心に据えた企画を作れます。
例えば、普段は接する機会のない職種の仕事を紹介したり、商品が完成するまでの工程を見せたりする方法があります。企業名だけでは伝わらなかった仕事へのこだわりや人柄も、コンテンツとして届けやすくなります。
企業ではなく「この人の投稿を見たい」と感じてもらえれば、商品情報とは異なる形で企業を知ってもらうきっかけになります。
広告感が薄く、コンテンツとして楽しめる
企業SNSが商品紹介やキャンペーン告知に偏ると、ユーザーによっては広告色が強いと受け取られることがあります。
サブアカウントでは、仕事の裏側、社員同士のやり取り、専門知識、制作過程などを企画にできます。商品を直接売り込まなくても、ユーザー自身が「知りたい」「見てみたい」と思える内容を作りやすくなります。
SNSでは、保存やシェア、コメントなどの行動も、ユーザーの関心を示すシグナルとして扱われます。最後まで見られる・繰り返し見られるコンテンツを作ることで、既存フォロワー以外との接点が広げられる可能性もあります。
企業への心理的な距離が縮まる
社員の姿や仕事の過程が見えると、企業を身近に感じるきっかけになります。普段使っている商品の開発背景を知ったり、店舗スタッフの工夫を知ったりすることで、企業への理解が深まる場合もあります。
ただし、「親しみやすい投稿をすれば好意が高まる」とは一概に言えません。ブランド認知度やコンテンツの質、配信方法などによって結果は変わります。
サブアカウントは、好意を直接生み出す仕組みではありません。公式では見せにくかった人や現場を通じて、企業を知る入口を増やす施策と考えると分かりやすいでしょう。
コメントやコミュニケーションが生まれやすい
ユーザーが参加しやすいテーマを扱えることも、サブアカウントの特徴です。社員への質問、仕事に関する疑問、企画への感想などは、商品告知とは異なる会話のきっかけになります。
例えば、コメントに寄せられた質問を次の動画テーマにしたり、ユーザーの反応から企画を改善したりする方法があります。ただし、コメントは投稿者全体の代表意見とは限らないため、SNS分析データや顧客調査と併せて見ることが望ましいです。
コメント数だけを増やすことが目的ではありません。ユーザーが何に興味を持っているのかを知り、次の発信に反映できる点にも価値があります。
企業のサブアカウント事例
企業事例を見る際は、再生数や企画の面白さだけで判断しないことが大切です。公式と何を分けているのか、誰に何を届けているのかを見ると、自社にも応用しやすくなります。
事例①JAL
JALは、YouTubeで「JAL、サブチャンネルはじめました。」を運用しています。メインチャンネルとは別に、パイロットや客室乗務員、グランドスタッフなどの社員を扱う企画を発信しています。

内容は、職種紹介、社員への密着、仕事の裏側、対談、旅に関する情報などです。メインチャンネルとは異なる、より親しみやすい雰囲気で、社員の素顔や仕事・旅に関する情報を動画で発信している点が特徴です。
人や仕事の裏側を独立したコンテンツとして継続している事例として参考になります。

画像出典元 :Youtube「 JAL、サブチャンネルはじめました。」
事例②花王
花王では、TikTokでデザイナーという専門職に焦点を当て、商品やデザインへのこだわりを発信しています。企業全体ではなく、実際にものづくりに関わる担当者の視点を前面に出している点が特徴です。

画像出典元:Tiktok「花王でつくるデザイン」
単に商品の特徴を紹介するのではなく、専門職ならではの知識や考え方を交えることで、ユーザーにとって学びや発見のある発信に変えています。
商品紹介とは異なる切り口から企業やブランドへの関心を高めるきっかけをつくれる事例の一つです。
反響につながるサブアカウントの共通点
サブアカウントでは、話題の企画をそのまま真似するより、誰に何を届けるかを先に決める方が設計しやすくなります。
発信する相手と役割を明確にする
最初に決めたいのは、誰に見てもらうためのアカウントなのかです。
例えば、若年層との接点を増やしたい場合と、採用候補者に企業文化を伝えたい場合では、発信内容が変わります。既存顧客向けの商品情報とも同じにはできません。
ターゲットと目的が公式アカウントとほぼ同じなら、アカウントを分ける必要性は低くなります。分ける理由を説明できる状態で開設する方が、投稿テーマも決めやすくなります。
売り込みより視聴価値を優先する
サブアカウントでも、商品やサービスを紹介すること自体に問題はありません。ただし、毎回の投稿が購入訴求だけになると、公式との違いが薄くなります。
例えば、商品の完成までにどんな工夫があるのか、担当者は何を考えているのかなど、ユーザーが知りたい内容から企画を考える方法があります。
「企業が伝えたいこと」をそのまま投稿するのではなく、ユーザーが見たくなる切り口に変えると、サブアカウントの役割を作りやすくなります。
人や現場を発信テーマにする
社員や現場は、他社がそのまま真似できないコンテンツ資産です。
例えば、商品開発担当へのインタビュー、店舗スタッフの一日、工場や制作現場の紹介などがあります。新しい企画を毎回ゼロから作らなくても、日々の仕事そのものを発信テーマにできます。
人を出す場合は、出演者個人の人気だけに依存しない設計も必要です。複数の社員が参加できる企画やシリーズ形式にすると、継続しやすくなります。
SNSに合った表現を取り入れる
公式サイトや広告で使っている素材を、そのままSNSへ掲載しても反応が得られるとは限りません。
動画なら冒頭で何を見せるか、視聴しやすい長さか、コメントしたくなる余地があるかなどを、媒体特性と自社の分析データに合わせて検証します。
音源や動画素材を使う場合は、権利面にも注意が必要です。特にTikTokで企業・ブランドの商用投稿を行う場合は、使用する音源に商用利用の権利があるか確認しましょう。権利処理を自社で確認できない場合は、商用音楽ライブラリなど、商用利用が許諾された音源を利用する方法があります。
開設前に決めるサブアカウント設計
サブアカウントを開設する前に、目的、対象者、発信内容、運用体制を整理しておきましょう。
まず、「若年層への認知」「企業理解」「採用広報」など、アカウントを分ける目的を決めます。そのうえで、誰に届けるのか、何を継続して投稿できるのかを整理します。
次に、社員、専門職、店舗など、誰を発信の中心にするかを決めます。特定の担当者を前面に出す場合は、異動や退職があっても運用を続けられる形を考えておくと安心です。
運用面では、投稿の承認者やコメント対応の範囲も決めます。パスワードを共有するのではなく、XやYouTubeなど権限管理機能を提供するSNSでは、役割別のアクセス権限を使う方法があります。利用可否や権限範囲はSNSごとに異なるため、各サービスの公式ヘルプで確認しましょう。
サブアカウントの開設にあたって、目的・KPI・コンセプト・テーマをその場で言語化できるアカウント設計ワークシート付きのホワイトペーパーを無料で配布しています。ぜひ、ダウンロードしてお役立てください。
サブアカウント運用の注意点
サブアカウントは、公式より自由に投稿するためだけの場所ではありません。企業が運営する以上、ブランドイメージとの整合性や運用体制、権利処理まで含めて管理しましょう。
目的が曖昧なままアカウントだけ増やすと、投稿内容が重複したり、更新が止まったりする可能性もあります。
公式との役割を重ねない
公式とサブで同じ内容が続くと、ユーザーによっては両方をフォローする理由を感じにくくなる場合があります。
商品情報は公式、社員や現場の声はサブというように、必ず固定的に分ける必要はありません。ただ、どちらのアカウントで何を優先するかは決めておく方が運用しやすくなります。
役割を分けられない場合は、新しいアカウントを増やすより、公式の投稿テーマを整理する方が適しているケースもあります。
担当者個人に依存しすぎない
社員のキャラクターが見える発信は、サブアカウントと相性の良い手法です。その一方で、一人の担当者だけに企画や出演を任せると、運用が続かなくなる可能性があります。
企画の型、出演ルール、撮影方法などを共有しておくと、担当者が変わっても継続しやすくなります。
個人の面白さを活かしながら、企業として再現できる仕組みも残しておきましょう。
ブランドの基準を守る
サブアカウントでも、発信主体が企業であることは変わりません。
親しみやすい表現を使う場合でも、第三者の著作権や肖像権、プライバシーを侵害しないよう確認が必要です。インフルエンサーや社員個人のアカウントを使った投稿では、広告表示の扱いを確認するケースもあります。
「サブだから自由」と考えるのではなく、公式より表現の幅を持たせながら、守る基準は共通化しておく方が安全です。
短期的な売上だけで判断しない
サブアカウントは、投稿からすぐに購入や問い合わせを生むことだけが役割ではありません。
SNSの管理画面で確認できる範囲では、リーチ、再生数、保存、シェア、コメント、プロフィール遷移、フォローなどを、ユーザーとの接触や反応の指標として見ることができます。指名検索やサイト流入なども、自社で計測できる場合は評価材料になります。
ただし、SNS上の反応がそのまま売上につながったとは断定できません。ブランドの認知度、広告の有無、商品特性、導線なども影響します。
SNS内の数値とWeb流入、指名検索、問い合わせなどを組み合わせて、中長期で変化を見るのがおすすめです。
まとめ
企業SNSのサブアカウントは、公式アカウントを置き換えるものではなく、公式では扱いにくい人や現場、専門性などを発信し、新しい接点をつくるための選択肢です。
活用する際は、公式とサブの役割やターゲットを分け、ユーザーが見たいテーマを起点に企画することが求められます。社員や現場など自社ならではの素材を活かしながら、承認体制や権利処理まで含めて運用を設計しましょう。
再生数やフォロワー数だけを追うのではなく、反応やサイトへの行動なども確認しながら、自社に合った役割分担になっているかを見直していくとよいでしょう。

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